あの年もホトトギスが啼かなかった。第三の就職先で担当の部長に頼まれ業界の機関誌に「自然からのメッセージとそれを受け取る感性」という題で、ホトトギスが啼かなかったのは冷夏の予告ではなかったのか、それとは気が付かず米が不作になって初めて慌てふためく人間には、自然と対話する能力の欠片もない。昔はそうではなかった、盛夏に農家の見廻りで出された茄子の朝漬けを食べ、「おかしい秋茄子の味がする」と異変を感じ取り、迫りくる飢饉に対応した二宮尊徳のように自然の発するメッセージを正確に理解できる能力を人間はもっていた。といったような趣旨のことを書いた記憶がある。
今年は遂にホトトギスの啼き声が聞けなかった。
涼しいのは結構、しかし、暑い季節はそれなりに暑いほうがよい。太平楽な公約を並べた選挙が行われているが、またぞろ米の緊急輸入などなど騒ぎにならねばよいが。
